第1編 物質の構成と化学結合

第1章 物質の構成

 

1混合物と純物質

2物質とその成分

3物質の三態と熱運動

 
 

 混合物と純物質 

【混合物と純物質】

物質とは「もの」を構成する成分のことで,混合物と純物質に分類できる。

 
 
 

純物質のことを単に物質という場合が多い。純物質はそれぞれ,〔 融点 〕,〔 沸点 〕,〔 密度 〕など固有の値をもっている。混合物でも,混じり合う純物質の割合が一定ならば,固有の値をもつ。

 例)水は常圧(1013hPa)で

  融点〔 0 〕,沸点〔 100 〕,密度〔 1.0 〕g/cm31cm3あたりのg

   (hPaヘクトパスカル(圧力の単位)

 

例題 次の物質を混合物と純物質に分類せよ。 

 @ 水素  A 過酸化水素水  B エタノール  C 氷  D 土砂  E 二酸化炭素  

F 酸化マグネシウム  G アンモニア水

 

   混合物:A 過酸化水素と水,D, G アンモニアと水

   純物質:@ B C(水の固体),EF
   
   (何と何が混ざっているか,考えてみる。思いつかなければ純物質)
   (化学式で書けるかどうか考えてみる。書けるならば純物質)

 

物質の分離・精製】

〔 分離 〕   混合物から目的の物質を分ける操作
 〔 精製 〕: 目的物に含まれる不純物(目的物以外の物質で少量存在するもの)を取り除き,より純度の高い物質を得る操作。
 

ろ過

〔 液体 〕とその液体に〔 溶け 〕ない〔 固体 〕を〔 ろ紙 〕を用いて分ける操作。

例)砂の混ざった水を分ける。

 
 

蒸留

 液体を〔 加熱 〕して発生した〔 蒸気 〕を〔 冷却 〕して目的の液体成分を得る操作。

例)食塩水から水を取り出す。

 
 
分留(分別蒸留)

蒸留装置を用いて液体どうしの混合物を〔 沸点 〕の差を利用して分離する。

例)水とアルコールの混合物



 例題 図は蒸留の装置である。スタンドなどの支持器具の一部は省略してある。
 
 

(1) 器具ADの名称を答えよ。

(2) 器具Aの状態で最も適当なものは@Cのどれか。

(3) 冷却水を流す向きは,@ア→イ Aイ→ア のいずれが適当か。

(4) 沸騰石を入れる理由を答えよ。

 (1) A枝付きフラスコ B リービッヒ冷却器 C アダプター D三角フラスコ

 (2) B (3) A (4) 突発的な沸騰を防ぐため。

 

抽出 混合物に特定の成分だけを溶か

 目的の物質をよく溶かす〔 液体(溶媒) 〕を用いて混合物から目的の物質を分離する操作。

 
 
昇華 

〔 昇華性 〕(固体が液体にならずに気体に変化する性質)を利用して,昇華性のある物質を分離する操作。常温・常圧では,ヨウ素,ドライアイス,ナフタレンで昇華が見られる。

 
 

再結晶

 結晶(固体)は,高温の水には多量に溶ける(溶解度が大きい)が,低温の水には少量しか溶けない(溶解度が小さい)。この温度による〔 溶解度 〕の差を利用した分離・精製の操作。少量の不純物を含んだ結晶を高温の溶媒に溶かす。この溶液を冷却すると多量にある結晶の物質は溶けきれなくなって結晶として出てくる(析出する)。不純物は少量しかなく,冷やしても溶けきれていて析出しないので不純物が除かれる。

 
 

クロマトグラフィー

水性インクのように複数の物質が混在する溶液を長方形に切ったろ紙の下端に塗布して乾燥させ,このろ紙を適当な液体中に立てると,液体はろ紙にしみ込み,ろ紙の上部に上がっていく(これを毛細管現象という)。このとき,塗布した混合物中の成分で,液体に対して〔 溶解 〕性が大きく,ろ紙に対して〔 吸着 〕性の小さい成分は液体と共にろ紙の上部へ移動する。逆に溶媒に対する溶解性が小さく,ろ紙に対する吸着性の大きな成分は,ろ紙の下部にとどまる。

 
 

このように,ろ紙などに対する吸着性の差を利用した分離方法をクロマトグラフィーという。ろ紙を用いたクロマトグラフィーを特に〔 ペーパークロマトグラフィー 〕という。

 

例題 次の分離・操作に用いられる方法や現象の名称として,最も適当なものを,下の@〜Eから1つずつ選べ。

(1) 塩化ナトリウムを少量含む硝酸カリウムから,硝酸カリウムを取り出す。

(2) 塩化ナトリウムとナフタレンの混合物から,ナフタレンを取り出す。

(3) 液体空気から窒素と酸素を分離する。

(4) すりつぶした大豆から,溶媒にヘキサンを使って大豆油を取り出す。

(5) 海水から純粋な水を取り出す。

(6) 砂の混ざった水から,砂と水を分離する。

(7) 植物の組織から取り出した,色素をろ紙と溶媒を使って分離する。

@ 蒸留  A 分留  B ペーパークロマトグラフィー  C 抽出  D 再結晶  E 昇華  F ろ過

 

 (1) D  (2) E  (3) A  (4) C  (5) @  (6) F  (7) B